勉強会やセミナーをやりたいときの大事なポイント (1) :目的編
IT業界は、勉強会が頻繁に開催され、
技術者向けだけでなく、ビジネス面でも人事面でも多くのイベントが社外で開催されているのを目にする機会があると思います。
「どんな勉強会に参加したらいいのか分からない」
「この勉強会は参加して意味があるのだろうか?」
といった意見も同時に多くあり、
参加者にとっても、主催者にとっても悩みの種でもあります。
そこで、今回は
・主催者の立場として
・登壇者として
・参加者の立場として
・スポンサーの立場として
のそれぞれの立場から、何を注意し、
どのように取り組めば良いかを書いてみたいと思います。
第1回は「主催者の立場として」
を中心に、企画面についてお話を進められればと思います。
ゴールを明確にする
- 何をテーマにした勉強会なのか
- 誰をターゲットにした勉強会なのか
- どのくらいのレベルを対象とするのか
など、イベントを企画するうえで定めることは多数ありますが、
重要な事項として、ゴールを明確に設定することが挙げられます。
企画者(自分)にとってのゴールとは?
登壇者にとってのゴールとは?
参加者にとってのゴールとは?
協賛者にとってのゴールとは?
考えるときりがないように感じますが、
これらは1つずつ明確に定める必要性があります。
1. 企画者(自分)にとってのゴールについて
ご自身が日本ユーザー会といったコミュニティであった場合は、
ユーザー会が持つテーマとなる技術の振興や、認知度の向上がゴールになります。
一方、企業主催の場合はどうなるかというと
- 人材募集目的
- ブランディング目的
- サービス告知目的
の3点に集約されるケースが多いです。
人材募集を目的とする場合は、
「技術セミナー」「技術カンファレンス」といったケースでイベントを開催しないように注意が必要です。
エンジニアやクリエイターのセミナー・カンファレンスの参加者は
純粋に学ぶことや、意見交換を目的としているため、
人材募集や告知といった情報は、企業側の期待値を下回る反応を示すことがあります。
人事系イベントとして、サービスや事業におけるテーマとなる技術が
どのような役割を果たしているのか、また、それらのエンジニアの環境や
技術力向上に対する取り組みを中心に紹介することで、さらなる人材を募集していることを告知することが成果につながりやすくなります。
一方で、ブランディングやサービス告知を目的とする場合は、
「技術セミナー」「技術カンファレンス」としてイベントを開催することが成果につながります。
注意となるのは、サービス告知を行う際は、開催する技術セミナーのテーマとなる技術がどのように使われているのか、またどのように実現させているのかを詳細に紹介することが重要となります。
例) 「○○サービスの△△基盤を node.js で実装した話」など
2. 登壇者にとってのゴールについて
登壇を依頼する際に、登壇者の方になんの目的で開催し、我々がどうしたいのかを説明するために必要となります。
ここは、登壇者にとってもどのようなスタンスでプレゼンをすべきなのかを決める重要な事項になります。
まずイベントのコンセプトを伝えることが最重要になります。
イベントを通じて、テーマとなる技術を盛り上げたいのか
年に1度のカンファレンスとして、未来を語る機会にしたいのか
ビジネスチャンスを広げる場として、技術を通じて語り合いたいのか
と、コンセプトによって大きくスタンスが異なります。
「なんでもいいので事例を話してほしい」
「以前話題になっていたので、ここを重点的に話してほしい」
といったざっくりとした内容で依頼をしてしまうと
登壇者も困ってしまい、宙に浮いた内容のプレゼンになってしまいがちです。
その登壇者がプレゼンをすることによって、
参加者に対して何を期待するのか。
何を伝えてほしいのかを明確にする必要性があります。
伝え方としては
「今度のセミナーで、UXのプロジェクトへの導入と効果測定をテーマにしたい。
ターゲットは、これから導入を検討したいという段階の人たち。
『導入するためには』というフェーズと、『効果を測るためには』というフェーズの
2段階で考えていて、どちらかのフェーズでセッションに登壇をしていただきたい
と考えている。
参加者は、会場内や twitter で議論に参加できるような、
インタラクションな形で会を進めたい。」
といったように
- コンセプト
- テーマ
- ターゲット
- アクション
を伝えられると、具体的にどうすればよいか、誰が出るのが適切かを考えることができてスムースです。
3. 参加者にとってのゴールについて
参加者にとってのゴールを主催側で設定をするのは難しいです。
人それぞれの目的があり、狙いが様々である以上は、これを決めることは不可能です。
では、ゴールを定める必要性があるというのは何を指すのか。
これは、
- どんな人に来てほしいか
- 参加することで何が得られるか
- 参加するにあたって、何をしてほしいか
を申し込みの際に伝えられるようにしておくことを指します。
どんな人は、どのジャンルのなんの職能で、どのくらいのレベルにある人かを定めるもので、ペルソナの設計と類似しています。
また、参加することで何が得られるかは、保証するものではなく期待できるものとして記載できれば良いと考えます。
さて、3つめの「何をしてほしいか」ですが、
参加する前にしておいてほしい事前のアクションや
最低限必要となる技術力・知識レベルを提示することを指します。
当たり前のように感じますが、ここが参加者に伝わっていないセミナーは意外と存在します。
事前に、ターゲットを明確にすることと、
必要となる事前知識は最低限明示するだけでも
登壇者・参加者ともに満足度の向上につながります。
また、質疑応答も事前に応募する方法もあります。
参加にあたって、事前にどのような質問があるか、
聞いてみたいことを募集しておくと、
質疑応答の沈黙を回避する手段の一つとして有効です。
4. 協賛者にとってのゴールについて
協賛者を募る場合は、協賛者(企業)にとってのメリットを明示する必要性があります。
イベント規模(参加予定者数、配信・閲覧数、テーマのメジャー度)に応じて
スポンサーからの協力を得ます。
スポンサーに依頼する支援事項は
- 運用資金提供
- 会場提供
- 懇親会費用負担
- インフラ支援(配信サーバ、ライブ配信・録画、会場も含む)
- 取材、レポート
- 広報
が多いかと思いますが、これを支援するにあたって企業側になんのメリットがあるのかを提示する必要性があります。
- 公式スポンサー掲載(PV数や話題性に応じて価値を算出)
- スポンサーセッションの確保
- PR LT枠の用意
- ブース確保
- スポンサー招待枠
などの用意がありますが、何よりも
企業がスポンサーをすることにより、何を得られるか(または何が期待できるか)を示します。
企業がスポンサーを打診されたときの判断基準は、
- うちがその技術のエンジニアを募集しているか(人事メリット)
- うちがその技術を取り入れているプロジェクトをどれだけ持っているか(実績)
- その技術ジャンルのエンジニア間へPRをするメリットがあるか(広報メリット)
- 技術ジャンルへの課外活動支援を行うことによる信頼度の向上を図る必要性(ブランディング)
- 費用対効果(その金額を出す必要性)
などがあります。
これらのゴールを、企画の段階で考慮しておくことによって、
そのセミナーの趣旨、性格が決定し TODO が明確になります。
まずはゴールを定め、そこから逆算する形で
優先順位を定めます。
- 最低限、会が成立する条件は何か(must 事項)
- あると良い条件は何か(better 事項)
- その会で成立すると最も良い条件は何か(best 事項)
を分けて、まずは must 事項から成立できるよう保障できるところから固めることが重要になります。